筋肉増と脂肪減、最優先はどっち?

筋トレ後48時間は内臓脂肪が燃え続ける

血液中のブドウ糖は細胞に入ってエネルギー源になり、あまった分がグリコーゲンの形で肝臓と筋肉に貯蔵されます。このとき全体の80パーセント前後が筋肉に入るので、筋肉の量が多ければ、それだけたくさんブドウ糖が取り込まれます。これによってインスリンが働きやすくなるため、筋肉が多いほどインスリンの効き目がよくなるのです。筋肉の量が10パーセント増えるごとに、インスリンの効き目が11パーセント上がるというデータもあります。

脂肪が落ちると基礎代謝が下がる!

さらにつらいのは、大変な努力で筋肉を増やしても、基礎代謝がほんの少ししか上がらないことです。筋肉が1キログラム付いたところで基礎代謝量の増加は1日あたりせいぜい20キロカロリー。これはキャラメル1粒分のカロリーで、これによる体重の減少は年に1、2キログラムとされています。そして思わぬ盲点は、脂肪も基礎代謝にかかわっていることです。脂肪が1キログラム減ると基礎代謝が5キロカロリー下がります。ということは、筋トレで筋肉を1キログラム付けても、脂肪が2キログラム落ちたら、差し引きすると、基礎代謝は10キロカロリーしか増えないのです。運動終了後も基礎代謝の高い状態が続くといっても、その上昇がこれだけでは、ちょっと物足りないですね。そうはいっても、無酸素運動がインスリンの効き目を高める効果は見逃せません。体に少し負荷をかけながら運動すれば、体内への酸素の取り込みを増やし、有酸素運動と同じように持久力を付けることもできます。筋肉の強化は高齢になってからの転倒防止にも役立つでしょう。有酸素運動にも無酸素運動にもよい点があるのです。

まず軽い筋トレ、それから有酸素運動を

では、内臓脂肪をもっとも効率よく落とすには、どんな運動が望ましいのでしょうか。スポーツ選手ではない一般の米国人に有酸素運動と無酸素運動を行ってもらい、内臓脂肪がどれだけ減るかくらべた研究があります。これによると、有酸素運動のほうが消費するカロリーが67パーセント多く、内臓脂肪がよく落ちました。研究者らは、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる場合も、有酸素運動を優先してメニューを組むようすすめています。具体的には、筋トレを軽く行ってから有酸素運動を行うのが有効です。筋トレをすると、筋肉や骨を強くする成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンには血液中のブドウ糖と脂肪酸の濃度を高める作用があるため、ここで有酸素運動を行えば脂肪酸を消費できて、脂肪の分解をさらに促すことができるのです。注意したいのは、内臓脂肪を落としたいのか、筋肉を付けたいのかで最適な実施方法が異なることです。内臓脂肪を落とすには、筋トレ→有酸素運動の順で実施するのがよいのですが、この順番だとタンパク質の合成がおさえられ、筋肉があまり付きません。これに対して筋肉を付けるのが目的であれば、有酸素運動→筋トレの順で行うのが有効です。有酸素運動を先に行うと、筋トレだけ実施するよりタンパク質の合成が高まります。その反面、脂肪の燃焼は少なくなりますから、今は内臓脂肪を落とすことに集中し、ブレずに継続してください。筋トレは10分くらい、少し汗ばむ程度行えば十分でしょう。ジムに通わなくても、自宅で腕立て伏せを30回とか、1分間の縄跳びを休みながら繰り返すだけで効果があります。ただし、現時点でかなり体重がオーバーしている人は欲を出すのは禁物です。無酸素運動は心臓に負担がかかるので、まずは有酸素運動だけを続け、5キログラム体重を落としてから筋トレを加えてください。